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「俺が使うとなぜか効くらしい。みんながみんな効くとは限らないから、君は気を付けて。
おかしいと思ったんだ。ほぼ気づかれる可能性がないペンの中に伝言を入れておくなんて」
確かに、と思う。普通の人間は、ペンを分解してみたりはしない。私も山中さんが指摘してくるから気づいただけだ。何もなかったら、多分気づかないまま使い続けていた。
いや、それもそれで嫌だな……あんなものを示したメモを常に持って仕事してるなんて。
先生は私の考えていることが分かったのか、一つ頷いて言う。
「多分、最初は椎名さんに伝えたいと思って仕込んだものじゃない」
「え? じゃあ、どうしてこんなものを?」
「君と共有したかったんだ。自分と好きな人を絡ませたこの薄気味悪い物の居場所を。愛に狂った人間はそういうことをする。何も知らずにペンを持ったまま働く椎名さんを見て悦に浸りたかったんだろう」
「……」
「けど、予想外のことが起きた。思ってたより自分がすぐに死んでしまったことだ。もっと長く君を眺めていられると思ってたんだろう。もしかしたら、恋を発展させるつもりがあったのかも。
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