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死んでしまうと少し目的が変わった。君に自分の気持ちを認識してほしいと思った。それで、必死に訴えかけていた、というわけ」
「……全然気が付かなかった」
「しかし、自分のへその緒と好きな女の髪を一緒に保存するって、ぶっとんだ思考してるな。その粘着力だけは感服する」
「先生が来てくれなかったら、どうなっていたのか分かりません。……ありがとうございました」
私は深々と頭を下げる。先生はこちらをちらりと見ると、すぐに木箱に視線を戻した。そして、少し眉を顰める。
前まで、先生のこの顔が凄く怖かった。でも、今はもう何も感じない。私を二度も助けてくれた先生は、絶対に怖い人なんかじゃないって分かったからだ。笑わない人だし険しい表情をよくしてるけど、優しい人。
「一人で勝手に開けてるなんて思わなかった」
「だって、一人で開けるなって言われなかったから。先生には後で見せればいいかなって」
「君はもっと危機感を持った方がいい。霊が絡むと、予想外のことが起こる。いくら生前いい人間に見えたと言っても、本当のところは分からない。反省するんだな」
「はい、すみませんでした」
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