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とすれば、私は絶対に先生に好意を抱いてはならないことになる。せっかく信頼して私には接してくれているのに、先生の期待を裏切ってしまうではないか。
ちくっと、胸が痛んだ。ほんの小さな棘が、心に刺さったよう。
「分かりました、何かあれば連絡させていただきます!」
「うん、何もないのが一番だけど」
そう言って誰もいないロッカールームで、私たちはこっそり連絡先を交換した。先生の連絡先を登録した瞬間、またしても手が震えてしまった。
痛い心臓に気づかないふりをしながら、再度お礼を言う。
「本当にありがとうございます、色々お世話になってしまって」
「まあ次から気を付けて。
人間は恐ろしい。死んだ後もだけど、生きてる間もね」
そう言った先生の声に、どこか悲しみを感じた。それに気づいた私は、不思議に思い、彼に素直に尋ねてみる。
「先生も、何か怖い思いした事あるんですか? もしかして、女性が苦手なのもそれがあったり?」
その質問に、先生は分かりやすく口を噤んだ。沈黙が部屋に流れる。
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