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瞬時に、聞いてはいけないことを聞いた、と思った。図星なのだろう、何か嫌な思い出があるのだ。馬鹿みたいに素直に質問しなきゃよかった。
後悔した私は、慌てて笑顔を取り繕って言った。
「すみません、変なこと聞いちゃって。えっと、何か困ったときは連絡させていただきます。でも何もないよう、これからは気を付けます」
「……ん。そうして」
そう言って先生は立ち上がる。私も鞄を持って後に続くと、彼が出口の扉に手を掛けて言った。
「しばらくしてから出た方がいい。一緒に出るところを見られるかも」
「はっ! 確かに!」
「じゃ、お疲れ」
「ありがとうございました!」
頭を下げると、先生はロッカー室から出て行ってしまった。一気に静寂が訪れ、私は再び畳にしゃがみ込む。
先生って、あれだよなあ。自分が人気者ってよくわかってるよな。私が先生と変な噂でも立ったら、ろくな目に合わないことを知ってるんだろう。前もそういう気遣いを見せてくれた。実際、あれだけ女たちに狙われている人と仲良くなったら、どんなことになるか。
そっとスマホを取り出してみる。
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