見てほしいもの

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   帰宅すると、ヘロヘロになって床に寝そべった。仕事も疲れたけど、そのあとにあんな体験をすれば、普通こうなるだろう。しかし横になってすぐ、自分の両腕を撫でられたことを思い出し、ゾッとしながら慌ててお風呂に入った。何度も腕をこすり、必死に洗い流す。  そしてお風呂から出てくると、髪を乾かす気力もなく、そのまま床にごろりと身を投げた。  さんざんだった。こんな結末になるなんて、思ってなかったんだもん。  思い出すだけでゾッとしてしまうが、そのあとに現れた先生のことを考えると安心感が出て落ち着けた。あのへその緒もちゃんと処理してくれると言ってたし、これで一安心。明日から、廊下に彼が立つことはないだろう。思えば、あの夜勤の日、先生にそのまま消してもらえばよかった。私が変な親切心を見せてしまったがゆえにこんな目に。  濡れた髪をタオルで拭き、水分を飛ばす。鞄を引き寄せてスマホを取り出し、うつぶせのままそれを眺めた。  交換した先生の連絡先。用がないなら、絶対に連絡しない方がいい。うざがられることは明白だ。  でも、今日のお礼ぐらい送ってもいいでは? 挨拶は社会人の基本だ。
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