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「……もし、一言でも来たらどうしよう」
例えば『お疲れ』だけでも。『はい』だけでも、彼から返事が来たのなら。私はこの胸に芽生えつつある気持ちを育ててみてもいいだろうか。
逆に既読スルーなら、やめよう。どうせ苦しむだけの思いなんだから、今ならまだ捨てられる気がする。変な賭けだが、人間とは時々こういうことをしたがる。
意を決してメッセージを送信してみた。胸がどきどきとうるさくてたまらない。祈るような気持ちで手を合わせた。
ただ、もし返事が来るとしても、すぐに来ないだろうなとは容易に想像できるので、一旦スマホは画面を消してベッドの上に置いておく。そしていい加減髪を乾かそう、と立ち上がった。
ドライヤーで乾かしている間も、胸はドキドキしてやまなかった。そわそわしてベッドの方を向いてしまう。
だが髪を乾かした後も、夕飯を食べ終わってからも、スマホが光ることはなかった。一度通知が来たので飛び上がってみれば、なんてことはないどっかの店の広告なので、がっくりと肩を落としてしまった。
やっぱり、返事はないよなあ。想定内だ、まあいいか。
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