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その人にとっては、未告知は正しいことだったようだ。残った家族にただひたすらお礼を言う姿は言葉に言い表せられないものがあり、私は我慢しきれず泣いてしまった。周りの人たちはてっきり、患者が亡くなったことで泣いていたと思い込んでいたらしいが。
あの一件があるので、森さんもそうだといいなあと思っている。家族の優しさに気づいて、最期のその瞬間まで楽しく過ごせていたら。希望を持ったままでいられたら。……そう、願わずにはいられない。
それからしばらく経った。私は変わらぬ日々を送っている。
仕事場でヘロヘロになって働き、家に帰ると死んだように寝る。休みには同期とご飯を食べ、好きなテレビや動画を見て一日を終える。その生活に藍沢先生が入ることなんてありえるわけがなく、あれ以降何も言葉を交わしていない。目が合うことすら、あったかどうか。
無論連絡も取るわけがなく、あのパンダのスタンプで終わっている。これで諦められるかも、と思う反面、先生が使っていたスタンプが気になって探している自分もいた。こっそり購入し、誰に使うこともなく眺めている。女々しいこと。
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