悲しい最期

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 ということで、イマイチまだ諦めきれないまま時間だけが過ぎている。  その日、日勤で病院へ向かった私は、普段通り勤めていた。だが、昼過ぎになると、ナースステーション内に置かれた心電図モニターを、先輩や先生たちが頻繁に見るようになっていた。私もちらりと覗き込んでみると、森さんのものだと気づく。  ああ……そろそろかも。  示す数値は大分小さくなっていた。今に始まったことではなく、森さんはここ最近一気に様々な値が悪化していた。今現在はもう、意識もないまま眠っている。その傍らには、もちろん奥さん。そしてすでに成人されている娘さんが一人付き添っていた。  私は受け持ち患者の点滴を準備しながら、なんとなくその光景を横目で見ていた。すると、モニターが高い音を鳴らす。すぐに、近くにいた藍沢先生が止めた。その音が何を示しているのか、すぐに分かった。  ほぼ同時くらいに、ステーションに宇佐美さんが入ってくる。今日の森さんの受け持ちは、宇佐美さんだったのだ。 「先生、森さんいいですか」  急いだ様子もない、静かな声だ。藍沢先生は頷いた。
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