悲しい最期

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「色々悩んだけれど、最期は苦しんでない様子だったし、これでよかったと思えます。看護師さんたちもみんな、父に病状を言わないでいてくれて……母も父に隠しているのは辛かったと思いますが、みなさんに励まされて頑張れたって言っていました」  ぽろぽろと目から涙を零すその姿に、こちらもぐっとくるものがある。私は泣きそうになるのを必死にこらえ、反対側の廊下を通ろうかと踵を返した。  その時、病棟中に響き渡る声がした。 『知ってたんか!!』  びくっと反応し振り返る。  そこにいたのは、恐ろしい形相をしている森さんの姿だった。怒りで目が吊り上がり、唇がわなわなと震えている。予想外のその顔立ちに、私は驚きでつい立ち止まってしまっていた。無論、先ほどの叫び声が聞こえているのは私だけ。みんな忙しそうに自分の仕事をこなしている。  彼は、立ち話をしている先生と娘さんに近づいた。そして強く握った拳を震わせながら、二人に叫ぶ。 『死ぬってことは分かってたんか、知ってて隠してたんか! 俺だけ知らんかったんか! だましてたんか……!』
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