悲しい最期

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「それに、先生もあんな近くで怒鳴られて……何も悪くないのに」  つい声に力が入ってしまう。向こうの気持ちもわかるのだが、やはりそれは聞きたくなかったというのが本音だ。霊なんか視えなければよかったのに。  少し沈黙が流れた。先生は何も言わず、なぜか視線をそらしてぼうっとしている。両手をポケットにしまい込み、口を開く。 「心配してくれたのか」 「……あ、す、すみません。こんなペーペー看護師に……」 「いや。  ああいうパターンは少ない。だが、死んだ後の人間に罵倒されることは何度かあった。それはもう慣れたから」 「慣れたんですか……」 「本来は聞かなくてもいいことを聞く羽目になるから、損はしてると思う。でも気にしてもしょうがない、向こうも悪気があるわけじゃない」  サラリとそう言える先生が凄いな、と素直に思った。同時に、あんな状況にも慣れるなんて、とても酷で恐ろしいとも思う。  視えるのに病院で働いている――これはやはり、想像以上に残酷だ。 「先生が気にしてないのなら、いいんです」
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