悲しい最期

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「奥さんが倒れちゃいませんか。そしたら、健人くんが困っちゃいますよ」 「それは分かってるんですけどね。  でも、夫がいつどうなるか分からないから……今出来ることはしておきたくて。少しでも会いたいし、今だけ耐えれば、って」  そう言った彼女の目から、ポロリと涙がこぼれた。口元は必死に笑顔を保とうとしている形が残っている。でも我慢しきれずに溢れてきてしまった水分を、必死に拭きながら紅茶を飲んだ。  紙コップの紅茶を両手に包み、ゆっくり味わうようにして飲む光景が、自分の心をえぐる。  何と声を掛けていいか分からない。  奥さんは俯いたまま、肩を震わせて言う。 「夫に打ち明けていないこと……本当にこれでいいのかなって、今でも迷うんです。まあ、今更明かすことなんてできませんけどね。こうなったら最後まで嘘をつき通さないと」 「たくさん悩んだんですね」 「決して、夫が弱い人間だと思っているわけではないんです。ただ、最期まで希望を持ったままでいてほしくて。夫らしくいてほしくて。でも私の判断は間違っていたのかも」
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