1752人が本棚に入れています
本棚に追加
あの日、紅茶を飲みながら泣いていた奥さんの姿を思い出す。笑っていた健人くんの顔も。
これから二人で……どうしていくんだろう。
閉じ切っている病室からは、何も声が聞こえない。
「辛いね、奥さん、子供も小さいのに」
近くにいた歩美が、声をひそめて言う。私と同じことを考えていたようだ。小さく頷いた。
「子供預けて働いて、シングルで頑張っていくんだろうね」
「はあ……うちらが家に帰った後、家事や子供の世話が待ってるなんて想像したら、倒れるよね? 凄いよ、母は凄い」
確かに。私なんて、疲れたらコンビニでご飯買って、家ではゴロゴロしてるだけだもんな。小さな子がいたら、そんな当たり前のことすら出来ないのだ。
しかし、あの可愛らしい健人君の顔を思い浮かべる。
「でも……支えになるよねきっと。健人君、久保さんによく似てるし」
「そうだね。落ち込む暇もないだろうね」
「忙しいっていうのは、ある意味いいのかな。想像もつかないや」
最初のコメントを投稿しよう!