悲しい最期

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 そのまましばらく過ごしたのち、久保さんがわずかに口を開く。乾いた唇同士がややくっついていた。そして赤い口の中から、掠れた声が零れる。 『みえていますか』  背筋に寒気が走った。無論答えられるわけもなく、私は泣きそうになりながらも必死に平常を保った。  自分が視えてないか、一人ずつ確認しているんだ。  しばらくその体制だった。看護長の言葉は何も頭に入ってこなかった。永遠のように感じられる中、久保さんは諦めたのか私から離れ、次の看護師の元へと移動した。気づかれないように、私は長い長いため息を漏らす。  こんな近くで声を掛けてくる霊なんて、初めてだった。  がくがくと震えてしまっている足を励ましたところで、ようやく看護長の話が終わった。今日ばかりは、彼女の話が長いことを心の底から恨んだ。  そして解散の合図があったと共に、私は一番にステーションを飛び出した。久保さんが今どうしているのか、振り返って確認する余裕はなかった。
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