悲しい最期

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 焦る気持ちをとにかく落ち着ける。そして頭に浮かぶのは、やっぱり藍沢先生の顔だった。先生今どうしてるだろう、検査中とかかな。いくら連絡先を知っているとはいえども、仕事中に連絡は出来ない。  とにかく今日を何とか乗り越えよう。もうステーションはいかない。最後人が多いときだけ戻って、記録をささっと書こう。とにかく久保さんを無視しなくては。  視えないフリをする。今まで私はこれでやってきたではないか。きっと大丈夫なはず。  決めた通り、とにかく病棟内の仕事をひたすら回った。幸い久保さんは、仕事をしている私に付きまとったりすることはなかった。  終業間際、ステーションに戻ってみると久保さんはそのままの状態で立っていた。だが私の姿をみた途端、嬉しそうに笑った。必死に視えないフリをし、無駄に同僚に話しかけたりして気を紛らわせた。  そして何とか上がった時は、ほっとした脱力感でへたり込んでしまいそうだった。 『こんばんは、突然の連絡すみません。  久保さんの霊がずっとステーション内にいます。  無視をし続けたのですが、ある拍子に視えるとバレてしまったようです。』
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