悲しい最期

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「どうして今、病院にわざわざ戻ってきたんだろう。奥さんと健人くんのそばにいた方がいいのに」  ぽつりと呟く。一度消えたのに戻ってくる、なんて初めてのパターンだ。あの家族思いの久保さんなら、家族を見守っていそうなものなのに。  ため息をついたとき、まだ握りしめたままだったスマホが鳴ったので驚いた。しかも、それはラインが届いた音ではなく、着信音だったからだ。慌てて体を起こしてみる。  藍沢響、の名前を見た瞬間、気を失ったかと思った。こんなに早く返事が、しかも電話だと!?  ちょっと忘れていた恋心が動いた。意味もなく正座し、一旦深呼吸をすると、私は通話ボタンを押した。 「もしもしっ、お疲れ様でござります!」 『噛んでる』 「おつ、お疲れさまです!」 『読んだ。朝彼がいたことは気づいてた。なぜバレた』  早速本題だ。  
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