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そのうち仕事が本格的に始まると、もはや背後にいる久保さんの存在など忘れてしまうほどに忙しくなる。廊下を駆け、患者と話し、分刻みで時計を見ながら動いていく。あきらめの悪いことに、そんな私にずっと付いて回っていたが、私は気に掛けることなく集中できていた。
あと少しで昼休憩に入る、という頃。運ばれた患者の昼食の配膳をし終え、息を吐きながらステーションに戻っていった。病棟中に食事のいい匂いが充満しており、自分の空腹を刺激した。あとは昼からの点滴の準備をして、お昼を食べに行こう。そんなことを思いながら中へ足を踏み入れる。ふと、背後を振り返った。
久保さんはいなかった。いつの間にか、私の後ろから消えている。
恐る恐るナースコールの方を見た。彼の定位置だ。だが、そこにもいない。驚くとともに、ほっと胸を撫でおろした。
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