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返事がないので繰り返し尋ねてみる。が、何も音は聞こえない。不思議に思いながらとりあえず切る。そしてそのまま病室へ向かっていった。あの人は今まで、ほとんどナースコールを鳴らしたことがない人だったよなあ。一人でトイレも行けるし、高齢だけれど認知症もない。返事がないし、ベッドに挟まって鳴っちゃった、とかかもしれない。
たどり着いた部屋は個室だ。私は軽くノックし、声を掛けて開ける。
「失礼します、何か」
扉を開いて目に入ったのは、ベッドの上にうずくまる小さな体だった。真っ白な髪が小さく揺れている。肩が異様なほどの速さで上下しており、小刻みに震えていた。
「どうしました!」
叫んで近寄り、その人の顔を見た。その顔色にぎょっとする。顔色が明らかに普通ではなく、唇の色も変色していた。チアノーゼだ。
はっとしてすぐ目の前にあったテーブルを見た。食べかけの食事達が並んでいる。
食事を何か喉に詰まらせた?
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