不穏

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 駆けつけた看護師や医師たちの早い処置のおかげもあり、その人は短時間で異物が取り出された。口からコロリと転がり落ちたのは、やはり昼食に出ていた果実だった。吐き出された後、ぐったりと眠ってしまったが、命には別条はなさそうとのことだ。  しばらくバタバタしたのち、先輩が『お昼に行っておいで』と声を掛けてくれたので、ようやくそこから抜け出した。ふらふらとした足取りで、ステーション内に戻る。  私以外のメンバーはすでに食事に行っているようだった。戻ると、たまたまその場にいた緑川さんが、私を見て声を掛けてくれる。 「お疲れ! びっくりしたでしょ」 「あ、はい……」 「でもすぐ緊急鳴らしてくれたし、対応としてはよくできてたよ。見つけたのも早くてよかったよね」 「ナースコールで呼んでくれたので……」 「いい経験だったってことだね。お昼ゆっくりしておいでー」  手を振られて見送られる。私はぐったりしながら頷き、とりあえず休憩室に入った。置いてある鞄を手に取る元気もなく、椅子に座り込んでため息をついた。
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