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もう半年、まだ半年。やはり、普段の業務には慣れてきても、こういう緊急時は戸惑うしドキドキしてしまう。今回は助かってよかった。
(……久保さん、まだいたんだ)
ぼんやりと考える。
彼はあの後もずっと病室内にいた。慌ただしく動く医療者たちを、じっと座った目で見ていた。そして時折私の方を見ては、場違いな笑顔を見せてくる。慌ただしくてさすがに気にしている余裕もなかったが、今思うとやはり彼は異様だ。
ぶるっと寒気が走り、両肩を手でさすった。
いつまで私のそばにいるつもりなんだろう。今日とことん無視したから諦めたかと思っていたのに。まだ駄目なんだ、やっぱり次の夜勤に先生に除霊してもらうことになるんだろうか。
はあ、と大きなため息を漏らす。後ろをついて回るだけならそう大して気にならなかった。だが、急変患者のそばはどうだ。生と死の境にいる人間のすぐ近くにあんな存在がいると、引きずられそうになる。今回は助かってよかった。
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