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どうして急変する直前だけ、そばからいなくなったんだろう。
嫌な考えが脳裏に浮かんでくる。でも信じたくなかった。そんなの、あの久保さんがするはずない。そりゃ亡くなった後戸惑ってたけど……山中さんだって生前はいい人そうだったけど……。
一人で思い悩んでいると、突然鞄にしまってあったスマホが鳴った。誰もいない部屋でやけに反響して聞こえる。手を伸ばしてそれを取ってみると、画面に藍沢響の文字があったので驚いた。あまりに慌てたので一度地面に落としてしまったぐらいだ。
私はすぐに通話ボタンを押し耳に当てる。
「もしもし!」
『今日の急変二人とも椎名さんの受け持ちだったよね?』
もはやもしもし、さえもなくそう聞かれた。私は何度も頷き、先生に助けを求めるように声を上げた。
「そうなんです! 窒息も、自殺未遂も私の受け持ちです」
『さっきの件。ほかの看護師も言ってた、患者はまるで悲観言動などなかったって。俺のチームだけど回診の時もそんな感じはなかった』
「はい。穏やかなおじいちゃんです。昨日受け持ってた先輩にも聞きましたが、別に普段と変わりなかったって言ってました」
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