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「ああ、ずっと一人だよ、寂しいもんだ。一度結婚の話が出たこともあったんだが、周囲に反対されて駄目になってしまった」
「え? どうしてまた?」
「相手が二十以上も年下だったんだよ」
目を細めて山中さんが言った。なるほど、年の差婚というやつだ。状況によっては、相手の親などが反対するパターンもあるかもしれない。
彼は懐かしむように言う。
「思えば、椎名さんはあの子にちょっと似てるんだよなあ。ああ、ごめん、おじさんにこんなこと言われても嫌だよな」
「あは! そんなことないですよ。似てるんですか、私?」
「うん、だから話しやすいもかもしれない。あれは本当に、年甲斐もなく夢中になった恋だった」
「その方とは、それ以降は……?」
小さく首を振る。
「連絡先も分からない。あっちは若いし、きっと今頃新しい相手でもいるだろ」
「でも、山中さんは心残りですか?」
つい聞いてしまった。相手ははは、と乾いた笑顔を漏らした。
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