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はっとした瞬間、鞄に入れていた手を、中で誰かが掴んだ。ぬるりとした冷たい手が、すさまじい力で握りしめる。喉から悲鳴を漏らし、その場でひっくり返った。
『……名さん、椎名さん?!』
ぱっと目を開ける。目の前に見えたのは自分の灰色のロッカーだった。私は転んでるわけでもなく、普通に床に座り耳にスマホを当てていた。最初に先生と電話していた体制だった。
すぐに出口の方を見る。扉はしっかり閉じており、少したりとも開いてはいなかった。ただ、自分の全身は異様なまで汗をかいており、動いた拍子に顎からぽたりと汗が垂れた。
『椎名さん? どうした?』
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