藍沢響は笑わない

不穏

　脳内で色々とシミュレーションを行っていた。もし万が一、他の看護師に二人で誰もいない病室にいる様子を見られたらどう言い訳をしようか。まあ、何してるんだ、と疑問を持たれるかもしれないが、私と先生が業務中に逢引しているなんて誰も思わないだろう、変に言い訳するより淡々と答える方がいいに違いない。そうだな、ゴキブリが出たので退治をお願いしました。私はあのイケメンにゴキブリ退治させる女と噂になるだろうな、まあいいか。

　まずカンファレンスが始まったら、何気なくそっと抜け出す。大丈夫、そういうのは珍しいことじゃない。患者とケアの約束してるとか、検査があるとか、そういう理由で抜けだすことはよくあるから。

　そのあと個室に向かう。多分久保さんは付いてい来る。そのあと、タイミングを見計らって先生が来てくれるはず。そこで消す……上手くいくだろうか。

　ため息をつきながら病院に着き制服に着替える。普段通り挨拶をして、仕事に入った。通勤途中は見当たらなかったが、ステーションに着いたとたんやはり久保さんは私の背後についた。昨日色々あったので期待しているのか、どこかにやにやと笑っているように見える。