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昼休憩が終わり、決まった時刻になると自然とステーションに人が集まりだした。カンファレンスの時刻なのだ。ナースたちがあふれやや狭くなったそこで、私は一番壁際に立っていた。カンファレンスが始まった後、目立たずそっと抜け出せるよう場所を考えたのだ。
私は無表情で立っていた。自分の中の何かが外れた、そんな感覚だった。
午前中に会った奥さん。久保さんにもっとできたことはなかったのか、と後悔し泣いているそのそばで、彼は私の背後についていただけ。あんな涙を見たら、そのあと家族について帰るのが普通ではないのか。声が届かなくても、触れられなくても、そばにいて見守ってあげるぐらいのことをしようと思わないのか。
そんなに医療者がみんなで病気を隠していたことが悔しいのだろうか。誰かに復讐したいとでも思っているのだろうか。
「はーいじゃあ時間ですね、カンファレンスします」
看護長の声が響く。すぐさま開始される。カンファレンスはせいぜい十分程度だ、うかうかしている時間はない。
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