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私の言動に、彼は一瞬驚いたように目を丸くした。そして何かを言いかけるように、わずかに口を開けた。彼の発言を聞く前に、私は言葉をかぶせる。
「こんなとこで何してるんですか? 自分が視える相手を探し続けて、執着して。ほかの患者を巻き込むこともして、何がしたいんですか!
今日の奥さん見たでしょう? 何も思わないんですか? そばで見守ってあげようぐらい思いませんか! 死んだら温かな心も失ってしまうんですか!?」
ポロリと涙がこぼれた。それを拭う余裕もなく、私は嗚咽を漏らしながら泣いた。
今一人で踏ん張ってる奥さんのそばにいてあげてほしい。それが何も伝わらなくとも、視えなくとも。目には見えない何かが伝わるかもしれないじゃないか。
そしてあなたはこんなとこで消されるのではなく、安らかに眠るべき人だ。病により人生を短く終わらされ、生前家族を思っていた温かな人なんだから。
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