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「…………それ、って」
心臓がバクバクと音を立てた。先生が言った『大きな勘違い』これの意味が分かる。
先生はこくりと頷いた。
「二人とも、ナースコールを鳴らした記憶はないんだそうだ。ナースコールで首を絞めた人はたまたま鳴った、ということも考えられるが、少なくとも窒息の方は、離れた場所に置かれていたらしいし、確実に手が届かなかったらしい」
「…………じゃあ」
私はゆっくり視線を久保さんに戻す。息すら止めてしまい、酸素が上手く吸えなかった。私はとんでもない思い違いをしていたのだ。
彼はやや俯きがちにじっとしていた。どこか一点を見つめ、拳を握りしめている。
違った。
違ったんだ。
私はてっきり、無視される怒りをほかの患者にぶつけているのだと思っていた。そうして仕返ししているのだと。だって普通、受け持ちの患者に一日であんな急変が重なる偶然なんてないから。
でも、そんな偶然があったのだ。本当にあの日はたまたま、ああいったことが起こってしまった。
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