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それに気づきいち早く異変を教えてくれたのは、久保さんだったのだ。あのまま人が来なければ二人とも死んでいた。二人からは手が届かないナースコールを代わりに押し、人を呼んでくれた。死に向かっていたのを間違いなく助けてくれたのだ。
受け持ちの二人が一日であんなことになるなんて滅多にないことなので、私も先生も完全に思考が悪い方へ考えてしまっていた。病室に入った時、初めから久保さんがいたのも納得だし、その後も単に助かるか心配で私たちを観察していただけなんだろう。
藍沢先生はじっと久保さんを見つめる。戸惑いの色が見えるその瞳を揺らした。
「自殺を試みた人は、ずっと前に書いたという遺書も見せてくれた。表面では家族にも看護師にも笑顔を繕っていたらしい。だが本人はずっと悩んでいた、昨日ついに決意してしまったということだ。
……俺と椎名さんはてっきり、久保さんがが周りを道ずれにしようとしているかと思い込んでいた。まさかその逆だったとは。
君は何を求めてる? 彼女に無視しろと言い続けたのは俺だ。それでも諦めずに執着して、一体何を言いたい?
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