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残念ながら君は死者だ。ここに居続けるのはよくない。俺は今日消すつもりで来た。あの二人の患者の急変の原因は君だと思っていたから。
でもそれが逆で……人を助けていたのだとしたら。自殺を止めていたのだとしたら、初めて……話ぐらいは聞いてみたい、と思う」
意外すぎる答えを聞き、私は驚きで先生を見上げてしまった。彼はいたって真面目で、決意したように久保さんを見ていた。死にそうだった人間を助けた、という事実が、よほど先生にとって衝撃だったんだろうか。
私も続いた。
「私にも聞かせてください。ずっと聞こえないフリをしていたあなたの声、一体何を訴えたいんでしょうか。無視しててごめんなさい、怖がっててごめんなさい。あなたなりの必死なアピールだったんですね。
家にも帰らず、ここに居続けた理由は」
私たちの問いに、彼はゆっくり顔を上げた。青白い顔に色のない瞳、いつもと変わらない様子だけれど、その顔を恐ろしいとは思わなくなっていた。こちらの受け取り方で、こうも違って見えるとは。
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