伝えたいこと

16/23
前へ
/273ページ
次へ
  『美和へ  あなたと大学のサークルで出会い、結婚し、もう四年が経ちました。息子の健人も生まれて、とても充実した四年でした。  健人が生まれるとき、おろおろする自分に「しっかりしろパパでしょうが!」と喝を入れ、一人いきむ美和の姿は頼もしくて今でも忘れません。    その後も良き妻、良き母として、美和はとても頑張ってくれていました。健人は可愛くて、こんな素敵な家族を持てて本当に嬉しく思っています。健人はやんちゃだけど人懐こくてみんなに可愛がられて、本当に自慢の息子です。  そんな美和と健人を残してしまうことを、本当に申し訳なく思っています。  俺の病気が判明した後も、健人を連れて見舞いに来てくれてありがとう。自分も大変だろうに、笑顔を絶やさずにいてくれてありがとう。八つ当たりしたこともあるのに、怒らずそばにいてくれてありがとう。  何より、嘘をついてくれてありがとう。  これは誰かから聞いたわけではありません、ただ、俺の体はやっぱり俺のものなので、もしかしたら、という思いがずっとありました。二人を残していってしまうのではないかと。美和は、それを必死に隠しているんじゃないかと。この手紙を読んでいるということは、自分の予感が当たっていた、というわけですね。
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1757人が本棚に入れています
本棚に追加