あなたの笑顔

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「小さな子供は時々そういうのが視えることがあるってのは本当かもね」 「三人とも幸せそうで、本当に幸せそうで……」 「君が手紙を作って届けたおかげだね」  私の語りに、先生は一言一言返してくれる。いつもめんどくさそうにしてるのに、今日は真っすぐ前を向いたまま丁寧に返事をしてくれた。淡々としたその口調が心地よくて、私は言いたい言葉をすべて吐き出していた。タオルには涙と化粧がところどころ付いて色模様を作っている。  本当に良かった、と安心する反面、もっと早く話を聞いてあげればよかった、とも思う。  赤い夕陽は静かに落ちていき、あたりは暗くなってきていた。先生は私に急かすようなことも言わず、車を停めたまま私の話を聞き続けてくれた。しばらく経ちようやく涙も収まってきたところで、私はちらりとサイドミラーで自分の顔を見てみた。案の定、鼻は真っ赤のピエロ状態だ。  ああ、先生の車に乗ってるのに、とんだブスな泣き顔だ。化粧だって落ちまくり。  そう心の中で少し残念に思っていると、先生が口を開いた。 「よく泣くな」 「す、すみません!」
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