あなたの笑顔

5/49
前へ
/273ページ
次へ
「嫌味を言ったわけじゃない。椎名さんらしいなと思った。椎名さんって、お人よしで人にすぐ感情移入するから」 「は、はあ」 「この仕事をする上でとても強い武器になる。だが同時に、きっと辛い。世の中にはどうしても受け入れたくない現実やジレンマが多くある」  先生が言いたいことは少しわかるような気がした。人間味を捨てて、何も考えず働けばこの仕事は少し楽になる。人が痛み、苦しみ、時には亡くなるこの現場で、感情とは時に邪魔な存在だからだ。  それでも、私はそんな存在にはなりたくないと思った。そうなればロボットと同じだから。  先生は小さく息を吐く。そしてこちらを見た。 「散々霊に関わるなって助言してきた俺だけど、今回ばかりは君が正しかったな。むしろ早々に話を聞いてあげればこんなにごちゃごちゃしなかったかもしれない。霊と関わることで救われる人間がいるなんて思わなかった」 「い、いえ、あの二人が久保さんに助けられたんだって気づいてくれたのは先生ですし……」
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1756人が本棚に入れています
本棚に追加