あなたの笑顔

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 自分と親しくなる女性は、周りから反感を買うということを自覚していた。 「俺が知らぬ間に彼女は仲間外れにされ酷い虐めにあっていたらしい。無視は当然、持ち物を壊されたり隠されたり、素人が思いつく虐めは一通り体験したみたいだな。  結局霊を助けることも出来ないまま、いろんな霊が縋りついてくる毎日にどんどん追い詰められていった。俺は忙しさに追われてそんなことにも気づかず」 「……辞めちゃったんですか? 彼女さん」  私の問いかけに、先生がこちらを見た。初めて見るような苦しそうな表情に、私は最悪の言葉を覚悟する。 ……まさか。 「自殺した。首を吊って」 「…………」 「今話したのは全部遺書に書いてあったことだ。俺は死んでからその事実を知った。何も支えにならなかったクソみたいな自分を殺したかった」  先生の低い声が車内に静かに響く。私は何も言葉を返せずにいた。  ああ、先生が女を苦手にするようになった原因がこんな悲しいことだったなんて。好きな人を追い詰め虐めていた女の醜い部分を、彼は身をもって体験したのだ。そりゃ女性なんてこりごりだろう。
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