あなたの笑顔

15/49
前へ
/273ページ
次へ
 もしかして彼がいつも黒い服を着ているのは、死んだ彼女への喪に服している意味があったのだろうか。  そして、先生がこんなにも人を遠ざけ、ほぼ笑わないほどになったのも、その出来事が関係しているんだろうか……。 「……彼女さんが亡くなって、遺書にも原因が書いてあったのなら、虐めた人々は」 「同じことを思って彼女の上司に会った。でも、残念なことだ。  遺書には『霊が視える』『毎日霊が縋りついてくる』なんてことも赤裸々に書いてあった。それを見れば、普通の人間はこう考える。あの子は精神的に病んでいたので被害妄想があった、虐めも彼女の思い込みでそんな事実はなかった」 「そんな!」 「どうあがいても、第三者の目から見ればそう解釈された。  ただ上の方から、彼女が自殺するほど精神的に疲れていたことに気づけなかったのは問題、として、彼女の上司は系列病院に移動させられた。虐めに関わったとみられる看護師たちも居づらくなったのか、同じように移動していった。もうあの頃のことを詳しく知ってる人間は、ほぼ残っていないかもしれない」  なんとも形容しがたい気持ちにさせられた。
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1755人が本棚に入れています
本棚に追加