あなたの笑顔

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 知りたいと思っていた先生のこと。でも今少し後悔している。あまりに重くて辛い過去だ。四年も前のことだと言っていたけど、多分先生の心の傷は何一つ癒えていない。  彼女が死にたくなるほど追い詰められていたことに気づけなかった自分が、許せないからだ。  相手も相談したいと思っただろう。でも言いにくかったんだろうな、先生がモテるのが原因で虐められるなんて、確かに口に出しにくい。でも自殺するなんて、他に方法はなかったんだろうか。別に死ななくても、転職でもなんでも方法はあったのに。 ……なんて考えられるのは、私が外野の人間だからだ。本人は何も考えられず、逃げる選択すらできないほど、ぎりぎりの状態だったのだから。 「あそこを右です」 「ん」  静かな車内で私の道案内だけが響く。音楽もラジオもかかっていない車はなんだか気まずい。  だがその沈黙を破ったのは先生だった。ハンドルを操作しながら私に言った。
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