あなたの笑顔

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「椎名さんは、似てる」 「え?」 「彼女に、似てる」  突然言われ、驚いて隣を見た。先生は表情を変えないまま、真っすぐ正面だけを見ている。 「お人よしで、感情移入しやすくて、一生懸命。凄く似てる」 「私が、ですか?」 「だから心配になった。君が霊が視えると知って、また同じような状況になるんじゃないかと。霊を可哀想に思って首を突っ込むんじゃないかと」 「だからああやって助言してくれたんですね」 「結局俺も一緒に首突っ込んでたら駄目だな」 「先生が優しいってことです」  私は微笑みながら言った。お世辞なんかではなく本音だ。この人はとても優しい人だ。  私を気にかけて守ろうとしてくれた。結局は霊のことも考えて助けてあげた。  見た目とは違い、温かい人なんだと、理解している。  先生はわずかに眉を顰める。 「そんなこと初めて言われた」 「なんでですか、事実ですよ!」 「変わってるね」  そういった先生は、ほんのわずかに口角を持ち上げた。そんな小さな表情の変化で、私はどきりと心臓が鳴る。
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