あなたの笑顔

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「まあ、病院周辺で一人暮らしをしてる看護師は多いし、あの辺はそれを狙って建てられた建物も多い。ありえないことではない」 「あ……まあ確かに、あのアパートは住んでる人も女性が多いですけど……あの、ちなみに何号室ですか?」 「301」  それを聞いてほっとした。さすがに部屋は違ったからだ。まあ、亡くなったのは外でみたいだし、部屋が現場ではないのは分かっていたんだけれど、部屋まで同じだったら出来すぎている気がしたのだ。  が、すぐにはたと気が付く。 ……ちょっと待って?  私は恐る恐る、先生に尋ねた。 「あの先生、その人の写真とかありませんか」 「なんで」 「ちょっとだけ見たくて」  私が言うと、彼は少し悩んだあとポケットからスマホを取り出した。そしていくらか操作すると、ぽいっと投げるように私に渡した。ちょうど信号が赤から青に変わり、車が再び動き出す。  私は緊張しながらスマホを眺めた。胸が痛いほどに鳴っている。
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