あなたの笑顔

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「晴子さんのことを知っていて、晴子さんが大事に思っていて、そして晴子さんの姿が視える人は、きっと世界に藍沢先生しかいません。  名前を呼んであげてください。話を聞くとか、話してあげるとか、そういうことは何も考えなくていいんです。ただ、あの人の存在を認識してあげてください。私はずっと無視してたから……。  久保さんもそうでしたけど、きっと周りの人たちに存在を認識されないってことはとても空しくて寂しいと思うんです。それを救ってあげれられるのは先生だけです」  彼女が泣いて留まっている理由は分からないが、まず何より目を見て話してあげる。きっとそれだけで、晴子さんは凄く嬉しいと思う。その相手が生前愛していた人ならなおさら。先生が彼女の名前を呼んで見つめてあげるだけで、きっと何かが変わる。  私の言葉を聞いて、先生は少しの間黙った。だが、すぐに強い目で前を向いた。上へ続く階段をしっかり見つめると、彼はとうとう足を動かした。  ゆっくりと階段を上る。狭い踊り場に着いたとき、一瞬先生は足を止めた。そして、階段上に立つ人の姿を見つめた。
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