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山中さんは感心したように言う。
「こりゃ街中で会っても分からないね。白衣じゃないと」
「あはは、白衣の印象が強いですよね」
「別人みたい。髪を下ろしてるのもあるかも」
「それはよく言われます」
「看護師さんはずっと結んでるもんね。仕事も終わったし、もしかして遊びに行くのかな? 楽しそうに髪を抑えていた。肩に落ちてるよ」
ぎくっとする。見られていたらしい。山中さんは笑いながら私の肩を払ってくれた。
デートでもないのに、一人で舞い上がっているのが馬鹿みたいだとは分かっている。しかもそれを人に見られるだなんて。ひどく恥ずかしくて、顔が紅潮するのを自覚した。
「デートとかかなあ。仕事帰りに食事とか……あれ? 藍沢先生?」
山中さんがそういったので、心臓が跳ねた。彼が見た方向に自分も視線を向けてみる。北口の外だった。一台黒い車が止まっている。その運転席に、藍沢先生が座っていたのだ。
まさかの車の中で待機?
山中さんが、私と先生を交互に見た。
「もしかして」
「あ! ほ、ほんとだ~先生ですね! 先生も上がったみたいですね。ははは」
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