あなたの笑顔

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 意味の分からない言い訳を述べ、そのまま先生の服を引っ張り、とりあえず廊下一番奥にある自分の部屋を目指した。女性は不思議そうに首を傾げながら、私たちを見送っている。  自分の部屋の前にたどり着き鞄から鍵を取り出した。そして中に入り、はあっと息を吐く。 「危なかった、あれ一歩間違えたら通報されてたかもしれません」 「かもな」 「人んちの前ってことすっかり忘れて……うわあ!! 先生!?」  自分の玄関に先生が立っていることに、今ようやく気が付いた。彼は眉をひそめて言う。 「言っとくけど凄い力で引っ張ってきたのは椎名さんだ」 「そそそそそうでした!!」 「いや、悪いのは俺だけど」 「い、いえ! えっと、あー、うん、ちょっとお茶ぐらい出します」  頭の中をフル回転させながら出た答えはこれだった。まさかこのままはいさようなら、というわけにもいくまい。だが同時に、部屋の中は大丈夫だっただろうかと心配になった。 「ああでも! 五分待っててくれませんか、ちょっと片付けてきます!」 「いや、てゆうか上がるわけには」 「ちょっとお待ちになって!」 「お嬢様?」
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