あなたの笑顔

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「……すみません、ペラペラと。何も関係ない私にいわれてもですよね」 「いや。  君の言葉はいつも素直で真っすぐだ、気休めで言ってないことは分かってる。ありがとう」 「あの……先生。病院辞めたりしないですか?」  私は心配していたことをぶつけた。先生が顔を上げる。 「だって、あの病院は辛い思い出も多いだろうし……でもどこかで晴子さんと会えるかも、と思ってたから続けてたって。もう晴子さんがいないことは分かったし、辞めちゃうのかなって」  先生が働き続けていた一番の理由はそれだ。晴子さんがどこかで彷徨っていたら会いたい、何とかしてあげたい。そう思うから未だ続けている。ということは、もういなくなってしまうのだろうか。  先生にとっては辛い場所だろう、でもいなくならないでほしい。これは私の私情だ。  仕事を辞められては私はきっと二度と先生に会えない。そんな関係じゃないことぐらい自覚しているのだ。  私の質問に、彼はお茶を飲みながら答えた。 「辞めない」 「え!」
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