あなたの笑顔

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「そりゃどこかで晴子が……と思って続けてたのは事実。でも四年も会えなかった時点で、もう晴子はいないんだって大分前から分かってたんだ。それでも働いてたのは、単にあの場所で自分の力を最大限に出したかったから。患者には何も罪はないし、救いたい人たちが大勢いる」 「そう、ですか」 「だから辞めるつもりはない。今の病棟は結構居心地いいしね」 「え、先生そんなこと思ってたんですか!?」 「まあ未だ絡んでくる看護師もいるにはいるが……でも基本、みんな気のいい人たちってことは分かってるし。働く上ではやりやすい」  まさかあの不愛想大臣がそんなことを思っていたなんて。なんだか嬉しくて顔が緩んでしまう。私もあの場所は好きだ、みんないい人たちだし優しいから。  ふふっと笑ってしまう。怪訝そうに先生が尋ねた。 「なに」 「いや、先生がそんなふうに思ってるなんて知らなくて。よかったです、辞めないなら安心しました!」 「そんな喜ぶとこ?」 「そりゃそうですよ! 先生が辞めちゃったらもう会えなくな」  鼻息荒く言いかけて止まる。今何を言おうとしたんだ?
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