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初めて見たこんな笑い顔。ああ、笑うと結構子供っぽくなるんだ、なんて。こんなふうに先生は笑うんだ。
胸が誰かにわしづかみにされたように痛んだ。こんな顔、反則じゃないか。
「おもしろ。吐かないし」
「は、はあ」
「あと俺、椎名さんは平気って言わなかったっけ。じゃなきゃ、まず今日車で迎えに行ったりしないから」
「は、はあ」
「君はギラギラしてないし、誰にでもお人よしだし、信頼できる。怖い女たちとは違うって分かってるから、大丈夫だよ」
そう言ってくれた先生に、私は返事を返せなかった。
言えるわけないよ、本当は私も心の中は先生に対して、こんな気持ちを持ってるなんて。
私を信頼してる、なんて真っすぐ言ってくれる先生に言えるわけない。
それに、あれだけ晴子さんを想ってるって見せつけられたじゃないか。
先生の心の中には、きっとずっと晴子さんがいる。
私の入る隙なんて、一ミリもない。
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