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忘れられない、先生の笑い顔、座った場所。使ったマグカップ、綺麗な涙。全部私の心に染み込んでしまっている。
思った以上に重症そうな自分に呆れ、私はマグカップを下げてシンクへ運んだ。
これは他のことに熱中するしかない。そうだ、仕事を頑張ろう。久保さんみたいに死を受け入れなければならない人たちは大勢いる、そんな人たちの気持ちが少しでも楽になれるよう頑張るんだ。それが今の私に出来ること。あ、死んだ後の面倒は見ないけどね。
今出来ることを精いっぱい頑張って前を向いてたら、きっといいことがあるはずだ。
私には明日が来る。今のところ健康で、働けて、ご飯を食べれば美味しいと思える。久保さんが望んでやまない明日が来る。
くよくよしていたら、せっかくの人生が勿体無い。いつ終わりが来るか分からないのだから、精一杯満喫せねば。
そう、失恋だって。悲しくても、きっといつかは笑って話せることだから。
「よし、明日も頑張ろう!」
私は意気込んで一人、笑った。
<完>
最後までお読み頂きありがとうございました!
またお会いする日まで。
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