1750人が本棚に入れています
本棚に追加
/273ページ
だが、彼は咳ばらいをして姿勢を正した。そして、申し訳なさそうに視線を落とす。
「気を悪くしたらごめん。君に対してだけこうってわけじゃない」
「え?」
「急だったから驚いて」
そんなふうに弱弱しく言う先生を初めて見て、冷静になった。そして、脳裏に今までのことが思い浮かぶ。
女性に興味ない素振り。助手席に座ろうとしたときの顔。触れそうになった時の驚き方……。
「もしかして、女性が苦手だったりしますか?」
単刀直入に尋ねた。答えなかった。ただ、困ったように頭を掻いていて、それが何よりの肯定だと分かった。
自分で言ってみたものの驚きだった。だって、医者でこれだけ顔もスタイルもいい先生が女嫌い? しかもあの反応を見るに、相当のレベルだと言える。唖然として隣を見つめるしかできない。
先生は仕方ないとばかりに言った。
「まあ、そう。苦手。患者相手は全然いいし、仕事中ってなれば看護師と近くなるのも別にそこまで気にならないけど、プライベートだったり、下心満載で近づかれたりすると無理」
「ああ、先生になら下心満載でみんな近寄りますよね……」
「そういうのほんと無理だから」
最初のコメントを投稿しよう!