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「いや……大丈夫。確かに、君はそういうことしなさそうだから」
その声に、少しだけドキッとしてしまった。普段とは違う、温かみを感じた気がしたから。
女として計算してなさそう、という意味だろうか。それとも、先生に興味ないというのが伝わっているのか。どちらにせよ、勘違いされなくてよかったと胸を撫でおろす。
先生は言う。
「てゆうか、やっぱり家まで送るから」
「いや、ほんと大丈夫です。お疲れ様です。では!」
私はそう短く言うと、ドアを閉めた。何か言いたそうにしている先生をそのままに、くるりと踵を返してそのまま歩き出した。実際本当に家はそこまで遠い場所ではない。歩くぐらい平気だ。女が苦手なのに助手席に乗せなければならない先生の気持ちを考えると、可哀そうでならないから。
私がしばらく歩いたところで、ようやく背後の車は動き出してその場から去っていった。横目でそれを確認し、はあと息を漏らす。
同じように見える人がいた。それは凄く嬉しいこと。でも多分、今後も共感できそうにないし話せそうもない。これから先も関係は変わらない、ということだな。
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