笑わない男

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 そして配属されたのは消化器内科・総合診療内科だ。真っ白な白衣に身を包み、希望と不安に包まれた職場へ通うことになる。  そこでたった一人の理解者と出会えることになるとは、夢にも思わずに。  病院独特の匂いが充満している。ナースステーション内で動き回る複数の看護師。病院は静か、というイメージがあるかもしれないがまるで違う。ナースコールの音、カートを押す音、心電図モニターが奏でる規則的な音が、いつでも零れている。 「椎名さーん、これ、点滴届いたよ! すぐつないで」 「あ、はい!」  先輩に言われて返事を返す私、椎名ひなのは、慌ただしく点滴をつなげる準備をした。患者の名前と薬剤の名前、量もしっかり確認する。忙しくても、絶対に抜いてはならない確認だ。  銀色のトレーにそれを乗せると、すぐさまナースステーションから出る。長い廊下には、ずらっと病室が並んでいた。
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