突然の別れ

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 朝は忙しかったが、それ以外はまずまず平和な一日だった。それでも歩き回って疲れた足は棒のようだ。合間を見てふくらはぎをマッサージしてみる。  さて、もう少ししたら上がれる時間だ。まだやることは少し残っていたかな。それでも、このままなら残業はそんなにしなくて済みそうだ。ほっと胸を撫でおろす。でも明日も日勤なんだよなあ。早く休みが来てほしいよほんと。  カートを押しながらステーションを目指す。脳内で今日一日のことを考えつつ歩いていると、遠くから藍沢先生が歩いてくるのが見えた。  今日ももちろん一緒に働いている。が、一度も目が合うことはない。想定内だ、昨日少し話したけど、それで私たちの関係が変わるなんてありえないと分かってる。私は特に先生を見ることなく歩き続ける。    と、誰かが先生を呼び止めた。恐らく、先輩看護師の宇佐美さんだ。  目鼻立ちがはっきりした美人で、どちらかと言えばプライべートは派手な感じの先輩だ。仕事をしてる分には普通にいい先輩なのだが、藍沢先生をあからさまに狙っているのはひしひしと感じていた。というか、多分病棟の人たちみんな気が付いている。
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