突然の別れ

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 頭の中でぐるぐると考えているとき、ふと気が付くと、藍沢先生がこちらをじっと見ていることに気が付いた。鋭い目つきで、つい背筋が伸びた。私は何事もなかったように、夜勤の準備を始める。霊に関わるな、本業に支障が出る、と警告されたばかりだ。  手を動かしつつ、困り果てていた。誰かに相談できることじゃないし、お坊さん呼んでお経をあげてもらうことも出来ないし、私が除霊できるわけでもないし。  やっぱり、関わらずいなくなるのをひたすら待つしかないんだろうか。 「お疲れ様でーす」  ステーションに明るい声がした。顔を上げると、今日一緒に働く予定の緑川さんだった。  年は四十くらいのベテランで、さばさばした明るい人だ。頼りになるし、一緒に働きやすいので、夜勤で一緒になるとこっそり喜んでいる。 「緑川さん、よろしくお願いします」 「よろしくー! 落ち着いてるといいねえ」  そう明るく言いながら笑う。なんとなく気が引き締まって、ぐっと胸を張った。山中さんのことを考えすぎて、集中力が無くなっていたんではだめだ。今から仕事なんだから!  自分に言い聞かせ、手元に集中した。
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