突然の別れ

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 その後、他のメンバーも集まり、申し送りが始まる。一通り終え、休み前の巡回に向かった。受け持ち患者一人一人に挨拶をして回る。九時半になったら消灯時間だ、病院の夜は早い。  何とか消灯前に全員回り終え、廊下を急ぐ。記録も書いて、点滴の準備もしなきゃ。夜勤は忙しいのだ。  まだ電気のついた廊下に、山中さんの後ろ姿を見つけ、しまったと思う。あっちから回ればよかった。なるべく近くを通りたくないんだけどなあ。  相変わらず頭を垂らして立っている。あえて遠回りするのも、わざとらしくてよくないかな、なんて思い、何も気づいてないふりをして追い越そうと考えていた。 「あ、ねえねえ椎名さん!」  突然呼び止められ振り返る。緑川さんだった。 「はい?」 「そっちに私の患者の眠剤混ざってない? 見当たらなくってー」 「ああ、どうでしょう、あったかな」  二人で立ち止まり、ワゴンの上にある薬剤をチェックする。袋の名前を一人一人確認しているとき、なんとなく、本当になんとなく、ステーションの方を見た。    山中さんが、こちらを見ていた。  手が止まる。
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