突然の別れ

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 彼はいつも、ステーションに向かって立っていた。ついさっきも、背中が見えていたはず。なのに、なぜ急にこちらを見たの? 顔と両腕を垂らしたまま、立ち止まっている。 「うーん無いなあ、どこに行っちゃったんだろ」  緑川さんの声が耳に入って、すぐに消失した。私はただ、息も止めて山中さんを見ている。  と、ずっと垂れていた彼の腕が、ピクリと動いた。  ゆっくりゆっくり、まるで体に付属された物を動かすように、力なく右腕が持ち上がる。不自然な動きで腕がまっすぐになると、次にだらりと脱力していた指先が動いた。  徐々に動く人差し指。その先が、自分に向いていると気が付いたとき、喉からひっと声が漏れた。  私を指している。 「椎名さん?」  緑川さんの不思議そうな声がして正気に戻る。私は慌てて視線をそらし、作り笑いを浮かべた。やや裏返った情けない声で、わざとらしく言う。 「ええー? ありませんねえ? おかしいな、他のメンバーのところかもしれませんね! 私聞いてきます」 「いいの?」 「もう回り終えたので。行ってきますね!」
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